流鬼とまた喧嘩をした。


キッカケはいつも些細な事。


これで一体何度目になるのか本人たちですらわからないほどの回数。



何でかいつも本当にどうでもいいことで喧嘩になる。








「いい加減さっさと中に入れよ、流鬼も」


ベランダで携帯でメールを打っているだけににしてはすでに一時間以上たっている流鬼はガラリ、と窓を開けて言う。


ヴォーカルなんだから、風邪でもひいたらどうするんだよ、の言葉に流鬼の返答は無言、だった。玲汰の方をチラリとも見ずに。




「……。ぅおーい。俺が看病するハメにどうせなんだろ〜?」



聞いてんのか?お〜い、なんて少し軽い言い方をしても何も反応はナシ。



「……」



玲汰は流鬼の顎を掴み、無理やり自分のほうに向け、何だ、泣いてるのかと思ったべ、と。



そんな玲汰のセリフすら無視して室内に一人帰ろうとする流鬼。








喧嘩の原因はーーー…



本当に些細な事なのだ。


 
それこそ…







時が過ぎればたいした事のない
どうでもいいこと。










バシ!



流鬼の拳が玲汰の顔に見事に命中する。


 
「っ〜…」


玲汰はそのまま流鬼の腕にかかっていた指を自らの頬に移動させ、摩る。



暫くその頬を摩ってからまるで呟くかの様に玲汰は言った。



「非難、の声すらなし…か」



と。しかしその目に笑みは浮かんでいない。



しかしクク、と笑うその口は実に楽しそうに見える。


「ま〜だ、お怒り中なのかな、この歌謡い様は?」



玲汰は流鬼にグイと近づく。



流鬼の頬に触れ、唇がまるで触れそうな位置で玲汰はさらに言葉を繋げる。











「ずるいし、流鬼ってば。俺が謝るまで絶対に声、聴かせてくんねーし」




しばしの沈黙。そして玲汰の手はゆっくりと流鬼から離れる。



「ま、どっちに非があろうとなかろうと関係なく、だろな?」








たった一言

口にすれば

良かっただけの喧嘩





「結局…。流鬼にとっては俺って…、謝る価値もない男なんだな」




けれど

感情を言葉にするのは苦手で










「…って、オイ、流鬼?」




ガタ、と言う盛大な音と共に玲汰は流鬼に半ば押し倒される形で倒される。






沈黙ですら、

相手を傷つけてしまって…

二人は合わないのか、と思う時さえある。






見下ろす流鬼の瞳は哀しい色を浮かべる。
それでも玲汰はどいてくんない?と冷たく言い放つ。


「さっさと酒でも呑みたい気分なんだけど」



「……」



その玲汰のセリフに流鬼はスっと手をどかし、玲汰から離れる。









自分から離れるなんて事はできない。

でもいっそ離れたほうがいいのかも、と思う時さえも



玲は汰フ〜っと大きなため息をつきながら、本当にわかんね奴だべ…と漏らす。


「だんまりの次は無理やり人を押し倒して、その次にまただんまり?何したいんだよ、流鬼は?言いたい事ははっきりいえって」







しかし沈黙。






「…あっそ」




沈黙。しかし流鬼の手はしっかりと玲汰の腕を掴んでいる。





「…?手、離して流鬼?」






自分から離れられないなら

無器用なりに進めばいい






「……嫌だ……」


「は?」


「手は離さないし、謝っても離さない」


「あ?」






玲汰が流鬼がしゃべった、と認識するよりも先に流鬼は言葉を紡ぐ。



「さっきのキスで帳消しにしておけよ」



流鬼はあっさりと言う。




「以上だ」

そのさも当たり前、ないい方に玲汰は思わずアホか、と。




「キスの代金は受け取り済みだべ、張り手で。帳消しにならないっっつーの」




ったく人の事一体何だと思―…

その先の玲汰の言葉は流鬼の不意な口付けによって遮られる。































「        」














そして勝ち誇ったような笑みを浮かべて帳消し、と。



玲汰はもちろん不満な顔を浮かべてごまかされた気がするんですけど、かなり、と。



しかしそれは惚れた弱み。


「………酒呑みたい」




しかたなく玲汰はチラリと流鬼の方を向いて、もちろん流鬼も付き合ってくれるんだよな、と。






要するに、

全てはモノの見方、

それ次第、と言う事。





「絡み酒じゃなかったら付き合ってやるよ」










END




〜あとがき〜


これはあくまで流玲です!!!!!!!

そこんとこよろしく(ぇ)


これ原型になった話があるんですが、そのコピー本を持っているかたがいたらすみません(苦笑)