「俺、玲汰がいい」
葵さんの誕生日前に、そう言われた。
DRUGSTORE COWBOY
葵さんとお付き合いを始めたのが半年前。
どっちからってわけでもなく、お互い勢いに任せて好きと言ってしまって始まったこの関係。
初めてデートしたのは一週間後。
手をつないだのもその時。
ちゅうしたのは一ヵ月後。
何度かした後に、ちゃんとしたヤツもした。
でも
まだ
お互いにその先にはいってない。
「玲汰―?今日どーする?」
うちくる?とくいっと腕を引っ張られ顔を上げればそこには葵さん。
最近はお互いの家を行き来する事が増え、一緒にいる時間が微妙に増えた。
何気なく一緒にいる時間がとても心地よくて。
とくに何をするわけでもないけど一緒にいる事が増えた。
葵さんと一緒にいるのはすごく落ち着くけど。
時々凄いどきどきする。
ふ、っと引き寄せられて口付けられる瞬間とか。
耳元で急に話かけられた時とか。
そんなに自分が盛ってる方だとは思わなかったけど。
葵さんと一緒にいると凄くどきどきして、身体が熱くなる。
「あー…行く」
「何やのその間は」
くすくすされながら不意打ちのように口付けされ。
慌てて回りを見渡せば既に誰もいなのに気づく。
いつの間にみんなどこいったんだ?と。
「もう皆帰ったて」
俺らも帰ろうや、と言われて。
その顔は何故かとても
男らしくて。
俺の心が躍った。
通いなれた葵さんの部屋。
俺のものも何気に増えて、気づけば半同棲のような生活。
今だってタバコ銜えてる葵さんの脚の間に入るような体制でくつろいでいる。
身体の大きさはあまり変わらないのに、何故か葵さんはこの体制を好んでて。
俺はいつもすっぽり包まれるようにされる。
背中に感じるこの人の体温。
正直凄い安心するのと同時に
どきどきする。
「玲汰―」
耳元であの独特なイントネーションでささやかれれば全身の血が沸騰しそうになる。
「何?」
少しだけ顔を後ろに向け、声に答えようとすれば、そのままくいっと。
自然と顎を掬われ口付けられる。
タバコとコーヒーの味。
自分と違う銘柄のそれ。
そして大人な味。
「んっ……」
ゆっくりと唇を舐められた後にするりと舌先が口腔内に潜り込む。
かちりと葵さんの唇のピアスと歯がぶつかり、響く金属音。
体制的なものと、何故か握られてる主導権からか。
息があがるのはいつも俺の方で。
自分の口端から漏れる吐息と甘ったるい声に頭がおかしくなりそう。
「っっ…ふ…」
ゆっくりと離れる唇。
目を開ければそこにはくすくすと笑みを口元に浮かべた葵さん。
俺はこんなにもいっぱいいっぱいなのに、この余裕がムカつく。
「なーにんな潤んだ目で見てんよ」
襲うぞ、こら。なんていわれても実際襲われた事なんてなくて。
ぐりぐりと頭を葵さんの胸元に押し付ければ、案の定くすくすしたまま俺の髪の毛を遊ぶように撫でられた。
「あ、葵さんハッピーバースデイ」
カチカチと時を刻む時計と睨めっこの末。
秒針がキッカリ0に来たときに。
それと共に葵さんが好きそうなリングとジッポ。
実はそれ何気に俺とおそろい、とか恥ずかしくて言えない。
「ありがと」
玲汰とこうしておるのが一番幸せやよ、なんて言われれば、それだけで幸せ。
でも。
でも。
これじゃいつもと変われない。
変わらない。
だから勇気を出して。
「後、もう一個あんだ、プレゼント」
考えてしまう俺ら。
俺より俺の事を考えてしまう葵さん。
だから俺から。
「俺の事……もらって下さい」
数秒後の沈黙の後、ようやく言えた事。
付き合って半年。
「玲汰…」
一番最初に拒否ったのは俺。
それ以来、そんな雰囲気になっても、絶対に手を出してくる事はなかった。
でも
もっと葵さんと繋がりたい。
そう素直に思えて。
「俺、葵さんとならそう言う風になりたい」
かくして
俺は
葵さんの誕生日に
葵さんのものとなりました。
End
〜あとがき〜
葵玲。
なんか、この二人のカップルってすっごいどーでもよい事で本気で悩んでそうで(笑)
初エッチまでの道のりも流そうだな〜、なんて。
流玲とはぜんぜん違った感じっぽい、で始めたんだが…。
エッチ省略。
いや、本当はエッチを書きたかったんだけどね。
葵玲の初エッチ。
なんで、この葵玲のエッチ編。
続いちゃってもいいっすかね・・・?
葉月
20070120