木漏れ日の入る室内。カーテン越しに入る光はキラキラとしていて先日までの怒涛のライブを忘れさせるには充分なもので、ある意味平和だな、と。
やらなきゃならないとわかっていても、地下活動は自分の性には合ってはなく、正直ダルかった。
















じゃー、休憩入りまーす、そんな一声に周りから安堵の声。
レコーディングも撮影も打ち合わせも嫌いじゃない。
でも、どうにもピリピリしている空気にうんざり。
月頭にもらったウイルスによる身体の不調はある程度は良くなってはきているとは言え、この頭の奥の鈍痛が拭えない。


ライブだけをやっていければ本当にいいのだろうが、そうも言ってられないのがこの音楽シーン。


「ぁー……俺喫煙所いってくるわ」

別に楽器を持つわけでもない自分にとって、今日の打ち合わせは正直一人だけ中にうまい具合に入りこめずに身の置き所がない。
休憩時間くらい俺がいなくても全然話は進むじゃないか、といってしまえばそこまでだが、そうも言ってられない。
ポケットに財布と煙草が入っているのを確認して席を立つ。
それだけで、皆が今の俺をもてあましてるのがわかるというもの。
んな腫れもん扱うみたいに見んじゃねーよ、とイライラ。

ち、っと思わず出てしまういつもの癖。

この癖は時と場合によって、かなりの威力を発揮するらしく。
今なんかそんな俺にピクっと眉を寄せる葵さんに、苦笑いしてる戒。
そしてそんな俺にはお構いなしな幼馴染二人。
まあ、ある意味それもソイツらが俺との付き合いで生み出したもんだろうけど、そんな玲汰の態度にもいちいち癪に障った。
















ウイー、、、と音をたてて紙コップの中に液体が注がれ終わるのを待つ。
喫煙所には誰もいなくて、一人。
「ったく何なんだ、このイライラ」
たまにあるこんなダウナーな時。
別に何が原因とかそう言うのはなく、いきなりくるソレ。
そんな時は人と関わらないに限る。
関わっていい事なんてない。


それがわかってるのかわかってないのか、この3日間位は玲汰ともロクにしゃべってないし、アイツんちに行く事も俺んちにアイツが来る事もしてない。

かち、っとライターに火を灯してゆっくりとふかせば、肺の中に広がるニコチン。
ドサリ、と設置されたソファーに深く座りゆっくりと煙を吐けば、くゆって天井までのぼり、その後散乱するかのように消えていく白い筋。
今の自分もこうして簡単に消えてしまえば楽なのに、そんな事出来るわけでもないし、そんな煙を呆然としながら見ていた。
「はぁ…」
余り好きではないため息も後から後から出てきて。
音楽以外にやらなきゃならない事が多すぎた。
歌を歌っていればそれだけでいいのに。
それすらも、今の自分の喉じゃ満足に出来ない事に対しても苛立つ。


「なーに辛気臭くため息なんてついてんだべ」

そんな時ふ、と頭上から聞こえる聞きなれた声。
麗がお前行ってこい、って言うからよ、なんて言いながら断りもなく俺の隣に自然と座られる。
「……んだよ。ため息つくと幸せ逃げるって言いてーのか」
んでうっさんもコイツよこすかなー、とあのアホ家鴨と。
まあでもコイツだからまだマシか、なんてぐるぐると回らない頭で。
玲汰が煙草を出すのが見えたと思えば、流鬼、と。
ぁー…コイツの声って落ち着くかも、なんて思ってたらぐいっと頭の向きを変えられ煙草から火をもっていかれる。


ジジジジ

しばらくして玲汰の煙草にも火がつき、俺のとは違った太い煙。

お互いの煙草から時折するフィルターの燃えていく音と俺のため息。
昼間だと言うのに誰も通らない廊下。

「ぁー…今の俺ほんっとやるせねえ」
ため息しか出てこないし、何がやりたくないとか何がしたいとかもわからなく、とにかくやる気がないだけ。
隣に玲汰がいるのに。
口から出れば幸せが逃げる、といわれてるため息だけ。

「…ライブ楽しかったべ」
唐突に会話を始める玲汰。
は?と相手の方を向けばどこか遠くを見てる玲汰。
俺と一緒にいるのに俺を見てないとかちょっとライブにジェラシー。
まあ、俺もコイツもライブあってこそだけど。
「ため息もつきたいだけついたらいーべ」
身体から嫌なもん全部吐き出しちまえばいーし、なんてあっさりと。
「は?」
そんな理論聞いた事ねーし。
「だから、身体に溜めてっと毒だから、ため息とかでもいいから出しちまえっての」
それ位俺が受け止めてやる、と。
少しだけはにかんだような玲汰特有の笑み。
それが、玲汰が照れている時だけ出てくる玲汰の表情という事を知っている。
「いっつもうぜぇ位元気にしゃべってるくせして」
流鬼が静かだと寂しいだろ?なんて言われて。
動けずにいたら指から煙草を奪い取られてすでに限界までいってたソレを灰皿に。
「落ちてる流鬼もいいけど、やっぱ一緒に馬鹿やっててーじゃん?」
だから早く復活しろ、って。


ちゅって。

「……」
今この人俺にちゅ、ってしました?!
玲汰からしました!?
間違いなく俺の唇にちゅ、ってしましたよね!?


「流鬼…?」
首を傾げられて心臓バクバク。
やべえ、可愛い。
俺今まで何どんよりしてたんだ、って本気でアホみたいになってきて。
「流鬼?マジ具合悪ぃ?」
額こつんとあわせて熱はねーな、なんて。
「あ゙―――――!!!!」
「おわっ!?」
いきなりのシャウトにびく、っとして離れようとする玲汰の手首をがっしりホールド。
あんだけ大声出せば、きっとメンバーの誰か出てくんだろ、と思えば案の定慌てたように戒が出てきて。

「ちょっっ!?何ごと?!」
ばたばた走ってきたからにや、っとして。


「ちょっくら玲汰借りるわ、ラジオには遅れねーよーにすっからよ」
じゃ、っとわけがわからない玲汰を引きずってスタジオを退散。
そして向かうは玲汰の家でした。
















「んっっ……」
玄関何に入るなりに壁に押し付けるようにして玲汰の唇を貪る。
唇を舌先で舐めてから微かに開いた所から強引に舌先を滑らせ舌先を絡める。
相手の額と手首。
多分がん、って結構大きな音がしたから、玲汰の背中はかなり壁に強打されたに違いない。
でもそんなことはどうでもいい。
とにかく今コイツが欲しかった。


「んっっんんっ」
急激な荒い口付けに呼吸がままならないのか空いてる手でどんどんと胸を叩かれる。
でも離したりなんかしないし、むしろさらに舌先をきつく吸ってやり、吐息すら飲み込むように。
飲み切れない唾液が玲汰の顎を伝ってく。
「っっ…」
がり、っと噛み付かれ玲汰の唇を貪るのをやめれば目の前の玲汰がズルズルと沈んでいく。
「……げほっっ…ば、かっっ…」
半ば酸欠状態なのか息も整わない感じで涙目で睨まれてもねえ?
第一コイツの上目遣いって本気でイイんだって。
自分の唇からつーっと生暖かい何かが流れるのを感じで舌なめずりしながら手でぐいっと。
「……鉄臭ぇ」
それが噛み付かれて出来た傷からの出血だと気づいたのは、その味。
「ここ……何処だと……っ」
玄関で盛るな、と言いたいのかと上から見下ろしながら思ったり。
まあ、久々だし、冷たいトコで玲汰寝かせるのも可哀想だしな〜なんて。
「えー…玄関だけど、、まあベット行くか」
起きろ、とぐいっと。
まだ力が入りきれてない身体を無理やり起こし、勝手知ったる玲汰の寝室へ。
引きずるようにしてた身体をどん、っとベットに押し倒す。
自分の上着を脱ぎながら玲汰の上に覆いかぶさるようにしてベットにあがれば、軋む音。
「っっ……流鬼っ」
いきなりの行動に慌てる玲汰を問答無用に口付け黙らせる。
玲汰の口腔内を貪るようにしながら片手で器用に全てを脱がしていく。
「んっっ……ふっっ」
滑るように胸元に指先を這わせればぴくんと跳ねる腰。
久々の感触にいつもより丹念にその感触を楽しむかのように手のひら全体で撫でてやり、人差し指の腹で胸の突起に触れる。
「っっぁ…」
口付けたままの玲汰の唇から掠れた甘い声が漏れ、それは俺の下半身を直撃する。
こいつのこの我慢した声は俺にとっては麻薬と一緒で、もっともっとと身体が欲する。
「久々だから?」
こんなに敏感なのは、とクスクスしながら唇を離す。
すっかり息があがって、潤んでいる瞳で見つめられるだけで、ゾクゾクする。
強がりなくせして身体は本当に敏感なんだよな、コイツ。
「……悪ぃかよ…」
流鬼だから仕方ねーべ、とふいっと顔反らされる。

はい、反則。

俺だからとか言っちゃっていいの、この雛が。
「じゃあ、もっともっと俺に感じてもらいてーな」
にぃ、っと口端が上がるのを感じた。







「っっんんっっ!!」
大して慣らす事もせずにいきなり繋がったせいかかなりの痛みをお互いに伴う。
もちろん玲汰はソコへの直接的な痛みと、俺には自身が無理やり引っ張られるような痛み。
でも、お互いに求めて繋がった安堵感と、精神の悦び。
「玲汰、わり・・・…」
痛いよな?なんてお決まりの台詞吐いたところで、コイツの痛みを紛らわせてあげる事は出来ない。
でも、じっとしている事も出来ずにそのままゆるゆると動かし始める。
ギチギチに拡がって、俺を受け止めている内壁はありえない位にきつくて熱くて気持ちよくて。
腰を揺らし、覚えてる玲汰のいい所を集中的に擦るようにして自身を動かす。
「ぁっっ…ンン・・・」
時折漏れる玲汰の甘い嬌声にずくん、と下半身にますます集まる熱。
やべ、と思った瞬間には玲汰の中でさらに硬度を増した自身に、玲汰がひくんと反応して。
「ば、、か…大き、、く…すん、な」
いやいや、って首ふる仕草すら可愛いってコイツ知っててやってんのか?って位初々しくて。
ぐい、っと腰を大きく突き上げれば、ひゃん、と鳴く玲汰。
「……もっと声聞かせろよ」
繋がりを深くしたくて、片足を肩に乗せてリズミカルに腰を揺らす。
前なんて全然弄ってねえのに、気づいたら玲汰自身からも密が溢れはじめてきてて。
意地悪く耳元で前こんなだぜ、って囁く。
そんな台詞一つすら玲汰にとっては快楽を得るものでしかなく、俺自身を包む内壁が収縮して思わずう、、っと。
三擦り半とかありえねえし!!
あぶねえあぶねえ。
名器ってマジでコイツみたいな事言うんじゃねーの?
「る、、きぃ……」
少し呂律が回らない感じで名前を呼ばれるだけで、本気で愛おしさで溢れる。
じょじょに結合部から濡れた音が響いてきて、それと比例するかのように玲汰の内壁がひくつく。
「玲汰…」
名前を低く囁けば、それに呼応するようにきゅうっと締まり、そして逆に名前を呼ばれる。
もっと、と誘われ、今日の玲汰がいつになく積極的な事に驚きながらも内壁を抉るように腰を突き上げた。















抜かずに3発。
抜いて2発。
風呂場で1発。

実に合計6回。

「…お前、、やりすぎ」
ベットの中で蹲る玲汰を見て苦笑。
コイツをヤり殺してしまうんじゃないかって位、中にぶちまけまくってすっきり。
そしてコイツが可愛くて愛おしくて愛してるな、と実感して数時間。
気づけば外は真っ暗。
携帯には無数のメンバーからの着信。

「やー、、、玲汰わりぃ」
でもすっげえ元気になったわ、なんてにこにこして見つめてたら顔にクッションがヒット。
「……動けなくなる程ヤる事ねーべ?」
ラジオどーすんだよ、なんてぼやき声。
「ラジオ体調悪いって言って休めよ」
本当の事だし、と頭撫でながらちゅ、っと。
額に触れるだけの口付け。
「……流鬼溜まってただけじゃねぇの・・・」
はあ、と今度は玲汰がため息をつく番だった。








End




〜あとがき〜



エッチシーンは割愛。
書きたかったのはため息はつくと幸せが逃げるんじゃなくて、身体にたまったものを吐き出すからいいって事(その場合周りにいる人が不幸になるけど)
玲汰に言わせるか流鬼に言わせるか悩んだトコなんだけど、たまには玲汰でもいいかなーって。
んで、B型の人って本当スイッチ入るのも切れるのもA型のわしにはわからん時があるから、それも(すげえ体験談だし)結局流鬼に振り回されちゃう玲汰さんが書きたかっただけなんだけど(笑)
昨日のラジオで湘にゃんコンビ二人だけいなかったのにも触発された(腐女子)
これは勝手にプレゼント第二段。
閨さんにあげます!
玲汰を思う存分喰っちゃって下さい(ぇ)


葉月透夜