年に一度のお祭り。

それは愛する人へチョコを送る風習。

俺がほしいのはただ一人からだけのチョコ。






それがでももちろんまた貰えないもんだろうな、なんて想定内。

去年なんて本気で喧嘩になって、結局俺がチョコをあげる羽目になった。

所詮たんなるお祭り事だけど、やっぱり好きな人からもらいたい、そう思うのは贅沢な事なんでしょうか。

そんな悩みで悶々したまま、そんな決戦の日の前日になってしまった。

どう考えても準備なんてしてるわけもないし、今年もコイツからはない、と。

まー、あんなの所詮イベントだし、なんて強がりでしかなく、結構ショックみたいな俺。

仕事が終わって、こうして一緒に帰るだけでも幸せなはずなのに、どうにもこうにもモヤモヤした思い。

「流鬼―?」

置いてくべ、なんて言われては、っと顔あげれば随分と出来てしまった距離にびっくり。

もともと歩く速度がゆっくり目な俺と、早い玲汰。

だから、よくこうなる事は多い。

でも、こうして声をかけられ、振り返られるとじんわりくる俺ってばコイツにとって、ちょっとでも気にかけて貰えてる存在なんだな、と。

「ちょっとコンビニでタバコ買ってくる」

俺より数メートル先を歩いてた玲汰が急に振り返って、そんな台詞。

そーいや、煙草の買い置きなくなってたっけ、なんて。

小走りでコンビニの扉の中に消えてく後ろ姿を見ながら、俺はゆっくりと歩く。

別に常に一緒にいるだけじゃなくて、お互いがお互いの事を思ってやってけたらいい。

一緒になる必要は無い。

むしろ違う個体だからこそ、楽しいし、愉しい。

『喜怒哀楽』

全てのベクトルが玲汰には向かっていて。

玲汰だから、ってのが正直大きい。



今だって、俺の事を考えてあっちは小走りでコンビニに入ったわけだし。

俺が何も用事が無いのを知ってるからこそ、そんな行動に出たわけで。

そんな些細な事ひとつに、とても玲汰から大事にされてます、と。

俺がゆっくり歩いてコンビニの前まで来た時にはすでに、ビニール袋を携え、出てくる玲汰と合流。

それが本当に俺って、コイツとは波長が合うんだな、と思う。

そして再び肩をあわせて俺の速度に合わせてゆっくりと進みだす。



「流鬼―」

明日仕事何時からだっけ、なんて聞かれて昼からー、と。

こう言うイベント翌日はリーダーの権限なのか、結構戒の言い出しでゆっくりな出勤になる事が多い。

今のマネージャーに変わってはじめそれもかなりアレだったけど、今回はついにアイツがどうにかしたらしく、ゆっくり出勤。

「じゃー、久々ゆっくり出来んべ」

久々だし、ちょっと嬉しい、なんて天変地異な事言う玲汰の横顔は微かにピンク掛かっていて。

そんな横顔は本気で可愛い、こいつと。

「俺も嬉しいし」

言いながら強引に手を掴み、指を絡める。

夜道だし誰も見てねーから、とコイツに文句言われる前に先手必勝。

滅多にない、素直な玲汰。

これに便乗しない手はないっしょ。

明らかに俺にとって嬉しいシチュエーションだし。

チョコはなくても甘い甘い玲汰がいればいいじゃん、って。



「流鬼の手ちょーあったけえ」

「玲汰は冷てーよな?」

二人でくすくすして歩く夜道。

はたからみたら大の大人の男が二人。

本気でキモいと思う。

でも

俺は今

心底幸せだった。









「たーだいま〜〜」

かちゃりと扉を開ければシーンとした室内と、煙草の染み付いたにおい。

室内の寒さに暖房を入れ、いつものように先にシャワーを浴びる。

その間に玲汰は玲汰で色々するのが日課。

俺が結構体調崩しやすいからかえってからまず温まるのが二人の決め事になって、俺はあまり好きでもない湯船につかる事も覚えた。

風呂場でゆっくりしてる間にアイツは筋トレとかして、汗かいてからシャワー。

そんな日常な出来事にすら、俺ら二人の時間があると実感する。

ついこの前までお互いキャンペーンで逢えない日々が続いてたりしたし。

また来月からちょっとだけ忙しくなるし。

「流鬼―!タオル置いとくぜー」

扉の向こうからそんな声。

やべ、結婚してるみたいじゃん、なんてアホな思考回路。

そして玲汰が風呂に入ってる間に俺は携帯チェック。

あまり、玲汰が携帯いじんねーから気づけば俺もあんまり二人でいる時はいじらなくなった。

だから、絶好の時間。

一緒に風呂に入るのも好きだけど、こうしてゆっくり自分の時間を持つのも好き。

結局贅沢なんだよな、俺と。

玲汰も玲汰以外のものも全て手放すつもりはさらさらない。

むしろ全部俺の。



「あー、、さっぱりした」

半分髪の毛濡れたままの髪の毛をタオルで拭きながら片手に牛乳。

俺の大っ嫌いな牛乳をコイツは毎日一本飲むとかありえねえ。

「何かテレビやってねぇの?」

する、っと横に座ってきてさっそくテレビのリモコン。

一緒にいる時間が増えてから本当に思った事は、こいつは常にテレビを見てるって事。

昔っからかなりテレビっ子だと思ってたけど、半端ねえ位いつでもチャンネル回してる。

コイツがこうしてる間は別に俺は携帯いじっててもいいって暗黙の了解。

そして何もねーとぼやき始めたら携帯をやめる時。



「何もやってねえ?」

ぱちんと携帯を閉じて腰にするっと腕を回す。

最近は抵抗される事も少なくなって安心と言うか何か。

去年の今頃は本気で抵抗されてよく殴られてたっけ、と。

「どーでもいい番組しかしてねえ」

そんなTVには陳腐な番組。

でも、この横にいる恋人の暖かさに嬉しさがこみ上げる。

「この時間じゃなー」

深夜って程じゃねえし、と言ってリモコンを今度は俺がいじる。

玲汰が牛乳飲んだ後は必ず煙草吸うのをわかって。

はい、やっぱり取りに行きますね、と。

するりと俺の手から抜ける細腰をちょっと寂しく思いつつもテレビを見る。

やっぱり一緒にいる時はくっついてたいよな、と。

早く帰ってこねーかな、なんて思わずおセンチ。

「流鬼―」

はい、これ、と言われて後ろを振り返ればソコにはポッキー銜えた玲汰の姿。

「……」

「んだべ、その顔」

ほれ、ヴァレンタインだろ?なんて言われて差し出されるソレ。

「ぇーっと……それ、俺にこっちから食えって言ってる?」

「……もういい」

もぐもぐと端っこからポッキーを食べてく玲汰に焦ってぐいっと。

引き寄せ強引に端っこから猛烈ダッシュ。

だってあの玲汰がだぜ?!

俺の頭がおかしくなったのか、って普通思うだろ!?

「っっっ!!!」

そのまま口腔内に残るチョコレートをむさぼるように舌先を挿し入れ上あごをなぞる。

頭を引き寄せ、逃げれないようにがっつりと固定して舌先を絡めとれば、すぐにあがってくる息に混じった玲汰の甘い声。

絶対チョコよりコイツ甘いよな、なんて考える余裕もない。

くちゅくちゅと音をさせ、その口腔内を堪能するかのように舌先を絡めていく。

明らかにいつもと違った味が、妙な興奮材料。

「っっ…んんっ」

鼻にかかった玲汰の上ずった声にはっとして、唇を軽く噛んでから離せば、そこにはすっかり目を潤ませた玲汰の姿。

ごっそーさん、と言ってぺろりと舌なめずりすればべし、っと飛んでくる鉄拳。

「んだよ、俺へのチョコだろ?」

食ってとーぜん、とばかりににぃっと口端上げて相手を見つめれば首まで真っ赤になる。

もう、貰えないと思ってたチョコをもらえて、それもこんな形で。

たとえそれがメンズポッキーとか書かれてる箱だろうが何だろうが気にしない。

玲汰が俺のために用意してくれてるって事実が凄いんだって。

「…んなに、嬉しい?」

たかがチョコだべ?なんて言われて。

たかがチョコです。

でも好きな人からもらうチョコは別なんです、と。

嬉しい、と即答すればはあ、とため息。

「……もっと食う?」

特別だからな、と。

そう言う玲汰の顔はほんのりピンクだった。

















「っっ…んっっぁ」

ベットの上で散々ポッキーゲーム。

最後にはポッキーだけでなく、いろんなチョコ菓子が出てきてびっくりして、それを一個ずつ玲汰から直接食わせてもらって。

気づけばベットの上に散乱するお菓子と、それにまみれてる玲汰。

最初は俺の上に乗ってた玲汰もやっぱり自分じゃ無理、とか可愛い事言って俺の下。

玲汰の全身から甘い匂いが漂い、それに酔いそうになる。

ぐちゅんぐちゅんと卑猥な音をたて繋がってる部分から溢れる蜜。

今日はトコトン遊びたくてシロップかけたりしたから溢れてるそれは、舐めたらさぞかし甘いんだろうな、なんて。

「ぁっっ…流っっ…」

いいトコだけを狙って突き上げれば溢れる声。

いつもよりも滑りがいいせいか、ただでさえ敏感な玲汰の身体が、ますます過敏に反応を示す。

俺のを食いちぎるくらいな勢いで内壁を締め付け、意識せずとも揺れる腰。

俺が食うんじゃなくて、こいつに食われるんじゃ。

それくらい玲汰の中は具合がいい。

「どーした」

名前を呼ばれ、にやりとして繋がったままぐいっと頭を引き寄せる。

「っ!!!」

それにより角度が変わり、玲汰の声にならない嬌声が響く。

ぐぐ、っと最奥まで自身が届き、玲汰のいい所をかする。

ゆっくりとギリギリまで引き抜き一気に突き上げる。

意外と玲汰はこれが好きで、鳴いて悦ぶ。

素直じゃねえから絶対に言わないけど、こいつの身体の反応から、嫌いじゃないはず。

「っっぁっっ……」

何かを言いたそうなのはわかってるが、あえて意地悪して腰を揺らせば玲汰の目の端に溜まり始める涙。

アー…今日は玲汰の意識ぶっ飛ぶまでやっちまいそう、なんて。

「玲汰ん中マジいい」

甘いしな、と言って耳朶を甘噛して舌先をねじ込むようにして舐める。

耳元で時折名前を囁くだけで、こいつの身体はおもしろいようにヒクつくから、やめられない。

「っっ…!!」

急激な内壁の収縮に玲汰の限界を悟り、一気にえぐるように。

玲汰の締め付けにめまいを覚えつつ俺は一気に欲を吐き出した。











「……うわー」

やっちまった、と思ったのは玲汰がすっかりと意識を飛ばしてぐったりしてうんともすんとも言わなくなった時。

そして甘い匂いとともに部屋に篭る特有のにおい。

玲汰を見れば、チョコ、というかお菓子にまみれ、精液に塗れて失神してます、状態。

「これ…」

とりあえず玲汰が目覚ます前にどうにかしとかなきゃ俺最低一週間は禁欲させられる、と思って慌ててベットから降りた。



End



〜あとがき〜

はい、今何日。

これかいてる今すでにずいぶんたってます(汗)

でも書きかけだったし!!!

さらにUPされるのに時間かかるのはわかってるけど〜〜〜(涙)

とりあえず流玲バージョンのバレンタインネタ。

えーっと、葵麗編と戒雅編もわしはやりますよ!!!ぇ



葉月透夜