「玲汰?」
ふと頭上から声がして見上げれば、そこには流鬼の姿。
今日は俺と流鬼の接点はないからびっくりするような出来事。
「なんか、戒からお前の顔色が悪いって聞いて」
お前ちゃんと飯くってんのかよ、とふいに傍によられる。
それだけで暫くぶりの俺の身体はビクリと反応してしまう。
だって、俺の腕から感じる流鬼の体温。
そしてこいつ特有の独特の空気。
「ぁー…平気だべ」
あんまり寝れてねえから、と言いながらもこの流鬼と一緒の空間。
一緒にいる、ただそれだけで俺の全ての細胞が喜んでたまらない。
脳裏に響く流鬼の心地よい声。
流鬼の声ってだけで、さっきまでのキーンとした音が微かに小さくなるかのような錯覚。
あれだけうざかった音が流鬼が傍にいるだけですこしだけ薄れていく感覚。
「…ふーん……」
まあ、玲汰が言いたくねえならいいけど、なんて言われてしまって苦笑い。
別に何も隠してるわけじゃねえし。
「最近俺ら忙しすぎるもんな」
俺もそろそろ玲汰不足で死にそうだしー、といきなり抱きつかれてバクン、と鼓動を刻む俺の心臓。
だってあまりにも暫くぶりすぎて。
俺の全てが流鬼の全部を感じてしまう。
匂い
体温
そして
声。
「…玲汰は俺と違って外に発散できねえからな」
そしてふっと触れるだけの口付け。
ちゅっ、と軽く唇をついばまれ。
そしてそのまま舌先を滑らされる。
「んっっ…」
後頭部をかくん、と後ろに沿わされて深くまで弄られる。
深く深く。
そのまま一緒に溶けてしまいたくなるのに、離れていくソレ。
「……」
言葉にする事も出来ずに思わずその濡れた唇をじっと見てしまう。
そこには俺のとも相手のとも言えないもので濡れた流鬼の唇。
その唇に触れたい。
触れて欲しい。
「……んなトコで盛んなよ」
そんな俺を見て困ったような顔して頭を撫でられる。
「……別にんなわけねえし」
実は離れるのが怖かったとか言えない。
そしていつもの俺からか、どうしてもそんな冷たい言葉。
「……まあ、我慢する前にちゃんと俺に言えよ」
こつんと額をあわせて合わせられる視線。
逃れる事を許さない強い強い眼差し。
まるで流鬼の強い心の現われのような強いソレ。
きっとコイツのコレと比べたら俺のなんて弱い弱いはかないものなんだろう。
「…流鬼には何でも話してるし」
耳のこと以外は、と心の中で小さく思ったソレは声となり流鬼の耳に届く事はなかった。
To be continued…