寂しく感じてしまうのは身体が弱ってるせいだろうか。
「あ、葵さん目ぇ覚めた?」
ふっと目をあけると、そこには見慣れない天井と、腕に点滴。
そして心底安心したかのような玲汰の顔だった。
When
You Sleep
ここの所仕事が最終段階で毎日毎晩と根詰め状態だった。
もちろんそれは葵と流鬼に限っての話しだが、他人には任せたくない葵と、所詮フロントマンの流鬼。
この二人はとくにハードだった。
それこそ睡眠時間も平均2,3時間で。
だからなのか、最近はどうにも身体の調子がおかしかった。
それでも、疲れた身体に鞭うって、仕事に向かったはずだ。
なのに、今ここはどこだろう、と。
それよりなんでこんなものにつながれてるんだ?と現状が把握できないでいると、目の前にある顔がとたんにふにゃ、と崩れた。
「ったく、葵さん働きすぎ」
「へ?」
葵さんが倒れたって電話もらった時マジ心臓止まるかと思ったべ!と。
その顔は本気で怒ってるが、目の周りは少し赤くて。
そしてどうやら自分が倒れたと把握する。
と言う事はここは病院なのか。
「ったく……、今更過労死とかありえねーし、第一俺残してくとか許さねえからな」
「過労……?あー!!!!」
麗の言葉に自分が残してる仕事の事を思い出す。
「何、葵さん。まだ仕事するつもり?そんな点滴されといて」
仕事、と口にでかかった瞬間玲汰の顔が怖いものとなる。
「葵さん、今の状況わかってる?倒れたって言ったべ?」
今日の仕事は休み。明日も。ちゅうか今週葵さん休みだ、休み、と。
「葵さんの分は戒がどうにかするって。後は俺らも分担するし」
だから、大人しくしててよ、と今にも涙が溢れてきそうな瞳。
その顔は本気で葵の事を心配してくれてる表情で、心にツキンときた。
最近忙しくて全然まともに話せてなかった。
久々にしっかりと見た玲汰に今こんな表情をさせてしまっている。
だから素直に
「ごめん」
と。
「葵さん、おとなしくベットにいろよ?」
俺、飯作ってくるから、と点滴を終え、自宅に帰ると玲汰も当たり前のように葵の家にきた。
玲汰の家に葵が行くことの方が多いこのごろ。
久々に帰った自室は何だか居心地が悪い。
いつも感じる玲汰の匂いがないからか。
「ん?葵さんどっか苦しい?」
布団になかなか入ろうとしない葵に気付き、キッチンに行こうとしてた玲汰が振り返る。
「……」
特に何もない。
別に身体の方も点滴のせいか、あのダルさが嘘のように消えている。
だから玲汰にどう答えていいかわからず黙ってしまった。
妙な沈黙。
「あー……、アレだろ、アレ」
そんな沈黙を破ったのは玲汰の方だった。
そして仕方ねえなあ、と。
「ちょっと寝付くまで傍にいてやっから、ほら」
言いながらする、っと腕を絡ませベットに誘導される。
「具合悪ィ時って、妙に寂しくなんべ?」
だからだろ?と。
ふわっと零れるような笑みがこぼれれば、今までの寂しさは消え、ほわんとした暖かい空気に包まれるようになり。
「葵さん、一人で何でもしょいすぎ」
もう、次は知んねーぞ、と言われ頭を撫でられる。
いつもする側なのに、される側になれば、何となく気恥ずかしい。
ベットに横になってる葵と、ベットに座ってる玲汰。
玲汰の少し冷たい指か心地よい。
「玲汰の手、気持ちええわ」
目をつむると、その指の動きと玲汰の存在で葵の口からはぽろ、っとそんな台詞が出る。
そして意識が沈んでいった。
「んー……」
随分と長い事寝てたらしい。
すでに窓から差し込む光は赤いもので、夕刻なのを察する。
そして傍にいない玲汰。
いつもだったらそんな事ないのに
そばにいない。
それだけで凄く不安になった。
「玲汰……?」
きょろきょろしてもいなくて、寝室を出ても玲汰の姿はなかった。
代わりにあるのはテーブルに玲汰が作ってくれたと思われるお粥とメモ。
『仕事行ってくる。飯くって寝てろ。玲汰』
「今日くらいおってくれてもええのに」
玲汰がいない、ただそれだけなのに、何故か目の奥が熱くなる。
「この粥しょっぱ、い」
何故か視界がゆがんだ。
「あれ?葵さん今起きた?」
ふ、っと顔を上げればそこには今自分をこんな気持ちにさせてる張本人がいて。
「れ、、玲汰?」
仕事に行ったんやなかったん?と。
「や、行ったんだけど、戒の野郎に今日は帰ってやれ、って」
あーあ、葵さん俺がいなくてそんなに悲しかった?と、くす、と笑みを零される。
そしてちゅ、っと目頭に口付けられ。
そっと
ちゅ、っと音をたてて
珍しい玲汰からの
キス。
「ずっと一緒にいてやっから、早く元気になれ」
それ喰ったら寝るぞ、と。
頭に手を置かれ耳元で囁かれる。
その夜は
玲汰に抱きしめられるようにして
眠った。
「よーっし!!!葵さん復活やー!」
休みをもらって二日目の朝。
起きて早々大きく伸びてまずした事。
「だー!!!ちょっ!!ドコに手ぇ入れてっっ……っっ!」
「玲汰の熱い看病で、俺元気になったんよ!だからお礼しやんとな?」
「っっ!!ちょ、、、ぁッ……」
そのまま朝日の中で玲汰が葵の下で鳴かされたのは言うまでもない。
END
〜あとがき〜
弱ってる葵さん。
ちょっとだけ自分ネタ(笑)
えーっとこれは1100番踏んだてつ様に……
本気でごめんなさい(汗)