「玲汰!!!しばらく泊めて!!!」
念願の引越しをして実家から出たばかりの幼馴染からそんな悲痛な叫びが聞こえた。
「発情期」
「で・・・なんでうちなんだべ」
ちゃっかりと我が家に居座ってる幼馴染の姿。
ついこの前、自宅を出て一人暮らしを始めたばかりだと言うのに、日付も変わりそうな夜更けに急に押しかけてきた。
一人暮らしを始めたせいなのか少し痩せた気がする。
昼間逢った時は別にいつもと変わった様子は全くなく、いつもと変わらず別れた。
なのに、急に押しかけてくるなんて。
絶対に何かがあったに違いない。
それも葵さんと。
「麗―・・・理由言わねえと、今すぐ葵さんに連絡すんぞ」
なかなか口を開こうとしない幼馴染を脅すような口調でそんな事を言ってみる。
もちろん本気さを表すために携帯をひらひらさせながら。
「!!!言う!言うから、、、それだけは勘弁してよ〜」
明らかに動揺して焦る姿に見える。
マイペースな麗がこれだけ焦るとは余り見られない事だけに、少しだけ真面目な気持になったのが間違いの元だった。
「………へ」
何か今有り得ない事聞いたんです、的にぽかんと言葉を失う玲汰。
目の前には有り得ない位頬を赤く染め視線をずらした麗の横顔。
「……だから、身体がもたねぇ、って言ってんだよ!」
「………は?」
全く話が飲み込めないでいる玲汰。
手にしているリンゴジュースを溢しそうになっているのすら気付いてない様子だ。
「だから、引っ越してからこう……毎日毎日で、寝れないし身体は痛いしできついの!」
だから助けろと。
だから最近妙に悩ましげな痕ばっかりついてるし、寝不足そうだったし、何より痩せた、っつうかやつれたのね、と。
「……んなの葵さんに言ったらいいっしょ」
呆れて言葉も出ない玲汰。
流鬼と違って葵さんは大人だしそれくらい聞いてくれるはずだべ、とため息混じりにそんなセリフが玲汰の口から出る。
「言って通じる相手じゃないんだよ。」
そう言ってうなだれる姿は本気で言っているようにしか見えない。
「……マジ?」
玲汰のしっている葵は真面目で大人ぶって理性を働かせている人だ。
なのに時折見られる子供らしさやライブ中のはしゃぎぶり。
そして事、麗の事となると本気で馬鹿なんじゃないか、と言う溺愛ぶり。
でも、今麗の口から聞いた葵はどう考えても発情期のそれ。
「もー、マジな話だよ!毎晩だしそれも一回じゃないし」
「……意外」
ぼそっと言えば、頭を抱える幼馴染みの姿。
「今まではうちきても家族いたじゃん?だから良かったんだって!!」
もう俺壊れちゃうし!と。
「で、うちに来たって訳」
「うん。匿ってくれんでしょ?」
玲汰ならわかるでだろ?なんて涙目で訴えられる。
「そりゃ………」
返答に困り言葉に詰まれば、忘れたとは言わせねぇぞと食ってかかる麗。
「忘れ、、てねぇし」
かつて玲汰が実家を出た時もあの男にヤリ殺されるんではないか、と言わんばかりだったのだ。
「あん時ぁ世話に……なってねぇ!!」
毎日毎晩のように4回も5回も求められ、挙句泣いてやめてくれと情けなくも懇願した日には余計あの男の欲望を擽ったと言うもので。
泣き付いた先の麗。
しかし助けてくれると思ったこの幼馴染みはあっさりと自分を見捨てて葵といちゃついてたではないか。
「てめぇ、あん時俺ん事捨てて葵さんとべたべたしてたじゃねえか?!」
「あれ?」
そうだっけ?うるぽん覚えてないかも、なんておどけられる。
その表情は本当なのか嘘なのか。
どっちにもとれる。
「あんっ時はマジで!足腰立たねぇ位やられまくったんだし!」
「だからー………今俺がその状況なんだって」
幼馴染みのよしみで助けてよ、と。
そんな麗の情けない姿に一瞬だけ玲汰は心を動かされた
「仕方ねぇなぁ…………なんて言うと思うか馬鹿」
「馬鹿?馬鹿って言った?」
とっさに言葉を返す麗は、玲汰の馬鹿、と言う言葉に反応してしまい、玲汰の変化をみおとしていた。
「馬鹿は馬鹿だべ?俺はあん時散々泣き付いたべ?それを無視しといて、いざ自分の番になったら、ってむしがよすぎだべ?!」
一瞬で玲汰から出る雰囲気が変わる。
滅多に見ない幼馴染みの怒った姿。
低い声をますます低くさせ睨まれる麗。
玲汰はこのさいだからこの幼馴染みに言いたい事をいってしまおうと考えたわけで、でもちゃんと麗の性格がわかってるからこその絶妙な呼吸でこう繋げた。
「まぁ、でも……何でうちにくんだっての。ちょっとは考えてみろっての」
言いたい事を全て言ったせいか、少しだけいつもの玲汰の雰囲気に戻る。
「玲汰?」
伺うような声を出す幼馴染みに玲汰は、こいつって昔からそうだよな、とため息をつく。
「いたいだけここにいたらいいべ。」
でも流鬼くんべ、と。
結局折れてあげるのは玲汰の方。
それは昔から変わらず。
「れいたぁーっっ」
歓喜の声をあげる麗に玲汰は肩をすくめる。
結局自分はこいつにも甘いのだ。
仕方がないか、と思った矢先だった。
それを見たのは。
「麗〜………助けてあげてぇのは山々なんだけどな、、」
何だか声色も様子もおかしい玲汰に麗ははっとのぞきこむ。
「??」
どうした?と首を傾げる。
そうすれば玲汰からはお前が馬鹿なせいだな、と。
「うちの鍵、流鬼も持ってんじゃん?」
言葉を詰まらせながら玲汰が苦笑いしながらそう言えば、知ってるし、と。
かつて玲汰が独り暮らしを始めたばかりの頃流鬼が嬉しそうにひらひらと鍵を回していたのを見てるからだ。
「わりい。うっさん。着いてきちゃったし」
頭上からは流鬼の声。
「……れ、、玲汰っ!お、俺、、ふりかえれないよっっっ」
なにかを悟ったのかガタガタと振るえながら玲汰にしがみつきいやいやして頭を押し付ける麗。
「麗、悪い事は言わねぇ。…………それ絶対に逆効果」
はぁ、とため息とともに苦笑いした顔。
「まぁ、精進しろ」
耳元で言われた。
そしてさらに今ききたくない声が身体の奥まで響く。
「うーるーはー?何で逃げんねん?」
「や、逃げてなんかないよ!そんなわけないじゃん!俺が葵さんから逃げるなんて!」
言いながらも玲汰にしがみつく力は変わらない。
むしろ力を増していた。
その声は明らかに怒りが含まれていたからだ。
「麗、諦めろ」
肩をぽん、とされた。
「………葵さん、寝室あっちな」
ゴムは引き出しで下に色々入ってっから好きに使っていいよ、と。
そう言いながら流鬼が顎でくいっと寝室の扉を指す。
その瞬間口端だけあげながら自分のピアスを舌舐めずりする葵の顔はひどく嬉しそうだった。
さながら獲物をとらえます、といった豹のごとく。
「さんきゅう、流鬼〜〜」
さーってわけはたっぷりベットん上で聞いたるで、と。
「いやーっっっ」
最近とみに身体を鍛えてる葵に簡単に引きずられていく麗の悲鳴がこだました。
「玲汰助けてー!!!」
無情にも引きずられてく麗。
「うちにきたあいつが馬鹿」
そんな事を流鬼にぼやく玲汰がいたとか。
〜あとがき〜
実家に帰宅しなきゃいけないのにパソしながら寝てたわしです。
だから2ページ目後半からは携帯で打ったわけですが(ようは車内で携帯とにらめっこ)
慣れないわしは何度か書いた話を消してしまいました(死)
あれって悲惨ですね。
そして携帯だと前後がすぐわからんくなる。
いつもと書き方が違って一人称メインなのはそのせい。
これは後編に続きます。
そっちは裏っす(笑)
両方の裏と
………4Pさせます(笑)
では